(参考資料「花の由来」安藤宗良著)

源平の昔のこと、
木曽義仲が「倶利伽羅峠」の合戦に勝利を収め、
京に攻め上った頃、
越前岬の近くに五郎左衛門という長者がいた。
この長者は、長男の一郎太と共に、
一族郎党を引き連れ村を出発し、
南進中の義仲の軍勢に加わった。

その留守中のこと、
次男の次郎太が海岸で救いを求める声を聞き、
助けあげるとそれは美しい娘だった。
それから二人の間に愛が芽生え、
春が過ぎ、お盆となった頃、長男の一郎太が帰ってきた。

父の五郎左衛門は討死してしまい、
命からがら帰ってきた。
一郎太は激戦で足を傷つけられ、片足であったが、
自分の姿を忘れて娘に心を奪われてしまった。

その年の冬、大しけの夜、越前岬の海岸で、
兄弟は娘をめぐって争い、
駆けつけた娘は二人の対立を心から悲しみ、

「仲のよい兄弟をこのようにしたのは私です。
私がいなければお二人の仲は悪くならなかったものを、
すまないことをしました。
私はすぐにここから姿を消しますから、
どうか元どおりに仲直りをして下さい。」と言い残し、
岬から身を投げてしまったという。

そして年が明け、春が来て、
この地にはこれまでに見たこともない美しい花が流れ着いた。
人々はこの花こそあの可憐な娘の化身に違いないと、
その花を越前岬の段丘に植えた。

するとその年、美しい「キンダイ・金盞」の花が咲いたという。
これが越前水仙の始まりであるという。

水仙 ヒガンバナ科 その3へ続く

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