葛西聖司の江戸遊学、講座の冒頭は葛西さんおすすめの芝居の名セリフの紹介コーナーです。今回は、先日お亡くなりになった女優の森光子さんの代表作「放浪記」から。なかなか売れずに苦労を重ねた作家の林芙美子の人生に、40歳まで脇役ばかりだった森光子さんの人生が重なる舞台です。

ラストシーンで、ようやく成功したにもかかわらず、疲れ果てて書斎でうたた寝をする芙美子に、文士仲間が言ったセリフ、「お芙美、あんた、ちっとも幸せじゃないんだね」。じつは、初演の台本には「あんた不幸だね」と書かれているそうです。言っていることは同じですが、印象はまったくちがいますね。2000回もの公演とでんぐり返しが有名ですが、味わうべきはそこだけではありません。

何度も読んだり聞いたりしているセリフも、葛西さんから聞くとまた新しい発見と感動があります。もう、森光子さんのライブの舞台は見られませんが、ご冥福を祈りつつ原作を読んでみてはいかがでしょうか。

投稿:塚本

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