菱(ヒシ)ヒシ科
古語の“拉(ひし)ぐ”が由来。
拉ぐとは押しつぶす意味。
実の形が押しつぶされたように見えるところから
名づけられたといわれる。

 

あまりお目にかかることのない水草ですが、
池や沼に群生する水草です。
花びらが4枚の1cmほどの小さな白い花を咲かせます。

秋、葉の間に灰褐色の堅果が熟します。
偏平な菱状三角形で鋭い2本のトゲをもっています。
舟やたらいに乗って実を採ります。
(ジュンサイ採りと似ています)

実を茹でるか蒸して食用とします。
栗や百合根とよく似ている食感で
ホクホクした味わいがあります。

“菱”は奈良時代から多数の文献に登場し、
食用として親しまれていたと思われます。
菱の形もよく知られ、「菱形」という図形が生まれました。
室町時代には、武田氏らが家紋に菱を図案化したようです。

雛祭りに飾られるお菓子の「菱餅」は、
菱形に切られている餅を3枚重ねたもので、
上から赤・白・緑となっています。

 

インド仏典の説話
竜に襲われそうになった娘の代わりに、
菱の実を差し出して救ったという話です。
菱の実は、子どもと同じ味がするといわれ、
娘の生命を救ってくれた菱の実に感謝し、
すでに命を捧げた娘たちの霊をなぐさめるため、
菱餅を雛祭りに飾るようになったと言われています。
子どもの無事成長を祈るかげには、
悲しい物語があったようです。

 

初夏の頃、園芸店で栽培したものを買い求めたことがあります。
ガラスの器に入れておくと浮草のようで、
長い根が美しく涼しそうです。
白いかわいい花も咲きました。
一年草なので夏の間だけでしたが、
秋には小さな菱の実が2~3個つきました。
小さいながら感動したものです。

投稿:染子

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